自分の土地だからといって、看板はどのようなものでも自由に立てて良いわけではありません。倒壊して誰かに怪我を負わせたり、地域の景観を損ねたりする事態を防ぐためにも、しっかりとルールを順守することが求められます。この記事では、看板設置の際の規制を定める屋外広告物法について解説します。

 

◇屋外広告物法とは?基礎知識を解説

屋外広告物法は、公衆の場所に設置される広告物の安全性と周囲の景観を保つために重要な役割を果たしています。広告物を設置する際には、法律に則り、適切な許可を得ることが必要です。ここでは屋外広告物法の基礎知識を説明します。

 

屋外広告物の定義

屋外広告物とは、常時もしくは一定の期間、道路や建物の外壁など、屋外で公衆に向けて設置される広告物を指します。具体的には、看板、立て看板、張り紙、バナーなどが含まれます。これらの広告物は、目的や内容を問わず、同法の規制対象になるので注意しましょう。

 

設置基準と許可

屋外広告物を設置するには、以下のような基準を満たす必要があります。

  1. 安全性: 広告物が風や地震などの自然災害に耐えられるように設計されていること。
  2. 美観: 周囲の景観と調和し、公共の美観を損なわないこと。
  3. 規模と位置: 広告物の大きさや設置場所が適切であること。

 

違反と罰則

屋外広告物法に違反した場合、罰則が科されることがあります。違反の内容によっては、広告物の撤去命令や罰金(30万円以下または20万円以下)が科されることがあります。立て看板など簡易なものは告知や通知なしでの即時撤去も認められています。安全性に問題がある場合や、無許可で設置された場合は厳しい対応が取られます。

 

 

◇屋外広告物法が適用される看板の種類と具体例

屋外広告物法について基本的な内容は分かったが、自身が設置する広告物が対象になるか分からないという方もいるでしょう。規制となる対象は地方自治体の条例によっても異なりますが、共通して言及できるものもあります。ここでは、国外広告物法が適用される看板の種類を具体的にご紹介します。

 

屋外広告物法が適用される看板の種類

前述したように、屋外広告物法が適用される看板は、常時もしくは一時的に公衆に向けて設置される広告物全てです。屋外に設置するものはほぼすべてが対象と言っても良いでしょう。具体的には下記のようなものが挙げられます。

  1. 自立看板

地面に直接設置される看板で、店舗の前や駐車場の入口などに設置されます。店舗の入口などに設置された商品の案内看板などがあります。歩道に倒れたり電飾機器が発火したりする危険があるため、安全性の確保が求められます。

  1. 壁面看板

建物の外壁に取り付けられる看板で、店舗やオフィスビルの外壁に設置されます。落下のリスクがありますし、サイズが大きいものが多く、景観への影響も大きいため、規制の対象になります。

  1. 袖看板(突き出し看板)

外壁から歩道などに突き出すように設置され、店舗の存在を知らせます。公道の上空に掲出することになるので、道路管理者の占用許可申請などが求められます。安全を確保するために突出する幅や高さについても制限があります。

 

屋外広告物法が適用されない看板の種類

一般の事業者には関係のないことが多いですが、屋外広告物法が適用されない看板も存在します。これらの看板は、特定の目的や条件に基づいて設置されるため、法律の規制対象外となります。

  1. 交通標識

道路交通法に基づいて設置される標識で、交通の安全を確保するためのものです。 具体的には道路標識や信号機が挙げられます。交通標識は公共の安全を目的としており、屋外広告物法の規制対象外です。

  1. 一時的な工事看板

工事現場で一時的に設置される看板で、工事の進行状況や安全情報を提供するものです。一時的な設置であり、工事の進行に伴って撤去されるため、屋外広告物法の規制対象外です。

  1. 自家用広告物

自宅や自社の敷地内に設置される広告物で、商業目的ではないものです。自宅の表札や危険に対する注意を促す掲示物があります。商業目的ではなく、基本的に個人や企業の内部利用を目的としているため、屋外広告物法の規制対象外です。

  1. 冠婚葬祭や祭礼の案内表示

結婚式や葬儀の会場を伝えるために一時的に表示するものです。営利目的ではなく、表示する期間も短いため、多くの自治体で対象外となります。

 

 

◇設置時に注意したい規制事項の例

屋外広告物法によって規制される事項は自治体により異なり、設置する場所、色彩、サイズ等に制限があります。設置する看板が規制対象に当てはまるものでないかをしっかり確認しましょう。ここでは規制の内容について一例を解説します。

 

看板の設置場所に関する規制

住居専用地域や景観地区、公園や学校といった公共施設などでは看板の設置が制限されている可能性が高いです。その他にも自治体ごとに広告物の表示が禁止された区域や場所があるため、設置を希望する場所が該当しないかを確認しましょう。

 

看板の設置箇所に関する規制の例

例えば以下のような物に対して広告物の設置が規制されることがあります。

信号機や道路標識

信号や標識に看板を設置してしまうと見通しが悪くなってしまったり、信号や標識自体が見えなくなったりして安全面が損なわれる可能性があるため禁止されています。

消火栓、火災報知器などの邪魔になる場所

緊急時に看板が火災発生の通報や消火活動を妨害しかねない場所への看板の設置は禁止されています。

景観法によって指定されている建造物等

景観重要建造物や景観重要樹木に指定されている場合、景観を損ねないために看板の設置が出来ない可能性が高いです。

 

看板の色彩に関する規制

地域によっては看板の色彩に規制がある場合もあります。例えば観光地などで、通常の看板色と異なる色彩を使用しているチェーン店を見かけたこともあるのではないでしょうか。色彩の規制がある場合は、マンセル値(色の属性を数値化したもの)や彩度の上限などの基準が設けられているので確認しましょう。

 

 

◇申請手続きと必要書類:スムーズな手続きのポイント

屋外広告物法の規制内容について解説しましたが、実際に広告を設置しようとした際にどのように手続きをすれば良いか分からないという方もいると思います。ここでは、申請手続きや必要書類についてご説明します。

 

規制区域と規制内容の確認

まず、前述したように看板を設置する予定の場所が規制区域に該当するかどうかを確認しましょう。次に各自治体には独自の規制がありますので、広告物の種類やサイズが制限に該当しないかどうかチェックします。自治体によってはホームページで制限内容がまとめられています。

 

必要書類の準備

看板を設置するための申請に必要な書類も、ホームページでまとめられており、ダウンロードできることが多いです。不明な場合は行政に確認してみましょう。一般的に下記のような書類が求められます。

屋外広告物許可申請書: 看板の設置を許可するための基本的な申請書です。

看板の見取り図: 看板のデザインや設置場所を示す図面です。

看板周辺の図面: 看板が設置される場所の周辺環境を示す図面です。

土地や建物の承諾書: 看板を設置する土地や建物の所有者からの承諾書です。

その他の必要書類: 自治体によっては追加の書類が求められることがあります。

 

申請手続きの流れ

規制区域と規制内容の確認し、必要書類を準備したら自治体の担当窓口に提出しましょう。以降の手順は、一般的に下記のような流れになります。

  1. 手数料の納付: 申請手続きには手数料が求められます。手数料は看板の種類や大きさによって異なりますので、事前に確認しましょう。
  2. 審査と許可通知書の交付: 提出した書類が審査され、問題がなければ許可通知書が交付されます。
  3. 看板の設置と工事完了届: 許可を受けた看板を設置し、工事完了後に自治体に報告します。

 

 

◇まとめ

店舗のブランドイメージを傷つけないためにも、しっかりと屋外広告物法を理解し、順守することが重要です。規制区域や制限内容を事前に確認し、書類なども不備がないように準備を進めましょう。事前に自治体の担当窓口と電話などで連絡を取り、疑問点や不明点を解消しておくとスムーズに進みます。設置に際しては、看板の専門家やコンサルタントに相談することで、手続きが円滑に進められるでしょう。